シルヴィ・ギエム ファイナル

今年の夏、シルヴィ・ギエムが突然年内での引退を発表した。
そして、現役のバレエダンサーとして最後の舞台に選んだのが日本である。
これは何を置いても行かなければならない。見ないと一生後悔する。
12月26日、名古屋芸術劇場へ行ってきた。
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シルヴィ・ギエムの舞台には何度か足を運んだことがある。
初めて彼女を見たとき、自分の中に今まで経験したことのない感情が押し寄せてきた。
今でこそ、「あの人にはオーラがある」と言うが、当時はオーラ等という言葉は一般的ではなかった。
しかし、ギエムが舞台に登場したとき、そこに圧倒的な存在感を感じたのだ。
これがオーラというものなのか。
当代の花形ダンサーであるアナニアシヴィリやルジマトフ(偶然二人とも自分と同い年である)は若い頃から何度も観たが、ギエムほどの圧倒的なオーラを感じたことはなかった。

今回の舞台では、「TWO」という短いソロと、ギエムと言えばこれ、という「ボレロ」をラストに見せてくれた。
「TWO」では、暗い照明でおぼろげに浮かび上がるギエムがゆっくりと動き出す。やがて踊りは激しさを増していき、巧みな照明の効果もあり、ギエムの手や足から閃光が放たれるように見える。踊りのキレは全く衰えていない。なぜ、引退するのか。自分の頭に疑問が浮かんだ。

「ボレロ」はラヴェルのボレロに合わせて、20分間ギエムが一人で踊り続ける。音楽の高揚に合わせて周囲に男性ダンサーの群舞が加わるが、あくまでも主役は一段高い円形舞台で踊るギエムである。ギエムの踊り、音楽の高まりと共に観衆のボルテージも同時に上昇していく。
全てが終わった瞬間、会場は興奮のるつぼと化す。
5階までぎっしり埋まった観客は全員がスタンディングオベーションで惜しみない賛辞を贈る。
隣のお嬢さんは泣いていた。
自分も涙が溢れているのを感じた。
拍手だけではない。
カーテンコールでギエムが登場するたびに大歓声が起きる。
まるでロックスターのようだ。
バレエ公演でこれほど観客が興奮しているのを見たことがない。

踊りは素晴らしかった。
何もかも以前のギエムに劣る点はひとつもないと言って良いだろう。
なぜ彼女が引退を決意したのか。
最初に浮かんだ疑問に対する答えが何となく分かったような気がした。
恐らく、ギエムは天の声を聴いたのだろう。
なぜなら、シルヴィ・ギエムこそ、「神に選ばれし唯一無二の舞姫」だからだ。

ギエムの前にギエムなく、ギエムの後にギエム無し。
オペラにおけるマリア・カラスのように、バレエの世界でシルヴィ・ギエムは伝説となり、世間は「第二のギエム」というありがたくない呼称を才能ある若手に与えていくことだろう。

シルヴィ・ギエムと同時代に生まれたことを、彼女のファイナルステージに立ち会えたことを心から神に感謝した。
この日見たことを僕は一生忘れないだろう。
ありがとう、シルヴィ・ギエム。
アデュー。

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Author:猫助
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