東山魁夷 障壁画展

猫助が中学生の時、お小遣いで初めて買った画集が東山魁夷画伯のものでした。
2番目はゴッホ。そこまでははっきりと覚えています。
もう40年も前のことですが、東山魁夷画伯がちょっとしたブームになっていたのだと思います。
だから中学生の僕が興味を持ったのでしょう。
一目で画伯の日本画に魅了された僕は、毎日のように画集を眺めていました。画面を覆う青や緑にすっかり傾倒していたのです。

豊田市美術館で開催中の「東山魁夷 唐招提寺御影堂障壁画展」(タイトルが長い)に行って参りました。
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豊田市美術館には初めてお邪魔したのですが、とても素晴らしい美術館でした。
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立派な建物です。豊田市は潤っているのでしょうか。さすが世界のトヨタ様です。
貧乏な我がまち、浜松市が少し不憫です。
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建物自体がアート作品になっています。
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ため息が出るような絶景。レストランではこのような素晴らしい眺めを楽しみながらお食事をいただくことができます。今回は大変混んでおりましたので諦めましたが、次回は是非立ち寄りたいと思います。

鑑真和尚様が唐の国から日本への渡航に何度も失敗し、それでも諦めず、失明を乗り越えて日本にありがたい戒律の数々をもたらしてくださったことは学校で習いました。
その鑑真和尚様が創建なさったのが唐招提寺です。

東山画伯が唐招提寺御影堂の障壁画制作を受けたのが1971年、最終的に完成したのが1981年ですから、10年もの歳月を要したことになります。
その間、日本各地のみならず中国にまで渡航し、障壁画のためのスケッチを重ねてきました。その姿は鑑真和尚様に重なって見えてしまいます。

展覧会は、スケッチや下図等も展示されており、画伯の制作過程をたどることができます。
そして現れる障壁画。
まったく見事としか言い様がなく、ただただ圧倒されてしまいます。
柱や梁などを含めて、御影堂がほぼ忠実に再現されており、全長80メートルに及ぶその壮大さに言葉を失ってしまいました。

「濤声」では、海の音が聞こえてきました。
写真のように時間の一瞬を切り取る芸術ではなく、画伯の絵は確かに動いていました。
波は今まさに盛り上がらんとし、松は風に揺れ、岩場は何万年にも渡って波に洗われ続けている。
海の水は写実的でありながら様式的でもあり、水を表現する青と緑はどこまでも透明かつ深遠でありました。
一つとして同じ形の波はありません。
「細部は全体を、全体は細部を支える」という画伯の言葉が思い起こされます。

「桂林月照」では、打って変わって無限の静寂さを感じました。月明かりに照らされた山々が水墨で表現されており、まるで黄泉の国に迷い込んだかのような静謐に包まれます。

今回の展覧会は唐招提寺の修理に合わせて企画されたもので、普段は非公開なのだそうです。
貴重な作品を拝見できて本当に幸せでした。
ありがとうございました。

今回は図録買いました。
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今夜じっくり目を通します。


吉田博木版画展

ブログをしばらく放置した後、2日連続で更新する。

あると思います。

Kohhyのライブが行われる名古屋ブルーノートに行く前に、名古屋ボストン美術館に立ち寄りました。
目的は「吉田博木版画展」です。
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版画といえば、猫助は川瀬巴水が大好きなのですが、吉田博もまた大好物なのであります。
それにしても、吉田博。
なんてお地味なお名前。
川瀬巴水と同じ時代を生きた版画家ですが、似ているようで両者の版画は全く趣が異なります。
川瀬巴水はすべてがドラマチック。
雪の降らせ方、雲の形、一本のガス灯でさえも画面を劇的に彩ります。
対して吉田博は徹底した写実主義。
完璧なデッサンと色彩構成で、空気や水を印象派的に表現しています。
それは二人の出自に由来するものと思われます。
川瀬巴水は浮世絵師。吉田博は西洋画家。
なるほどです。
猫助先生、たいしたものです。

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「瀬戸内海集 光る海」 (大正15年)
光の描き方が半端ないっす。

チラシの作品は「東京拾弐題 亀井戸」(昭和12年)ですが、一部を拡大してみます。
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垂れ下がる藤の花に薄墨を乗せて立体感を表現しています。
博さんパネエっす。

多色刷りなのですが、最高96回も版を重ねた作品があります。
96回!しろしさん、大丈夫っすか。

もう、版画でなくても良くなくないっすか。
画家なんだし、筆で書けば?

と、思ったのですが、衝撃的な作品に出会いました。
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「瀬戸内海集 帆船 朝」 (大正15年)

瀬戸内海に浮かぶ帆船が神々しい朝の光を背に受けて浮かび上がっています。
素晴らしい作品です。
ところが、この版画には朝の他に、午前、午後、霧、夕、夜の計6種類が存在します。
同じ版を使って、色を変えるだけで刻々と変化する光と空気感をすべて完璧に表現しているのです。
6種類が並べて展示されており、ただただ圧倒されてしまいました。
これは版画でしかできないですわ。
博様すごすぎます。凄技、いえ、これを神業というのでしょう。
吉田博、実はデジタルアートの先駆者だったのですね。

会期は2月26日までとなっています。
見ないと後悔しますよ。
猫助超おすすめの展覧会です。
http://www.nagoya-boston.or.jp/exhibition/list/yoshida-201701/outline.html

静岡近代美術館

去る10月22日、静岡市に「静岡近代美術館」が開館されたと聞き、11月の終わりに家内とともに伺ってまいりました。
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「静岡近代美術館」という名称から、てっきり公設の美術館だと思っていましたが、なんと個人が建てた美術館なのです。
静岡県民なら誰もが知っている「大村洋品店」の「ビッグな」社長さんが、個人で収集した近代洋画の数々を多くの人に見てもらおうと、私財を投げ打って鉄筋コンクリート造2階建ての立派な美術館を作られたわけです。
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(ホームページから拝借しました)
とても素敵な建物です。
住宅街の中で、ちょっとわかりにくい場所にあるんですが、案内の方がとても親切に駐車場の場所を教えてくださいました。
この建物の裏手に有料の駐車場があります。(料金は近隣よりもぐっとお安くなっています)
館内は靴を脱いでスリッパに履き替えるようになっています。
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(こちらもホームページから拝借しました)
日本では浅井忠から島田省三、西洋ではコローからビュッフェまで、私でも名前を知っている画家の絵が数多く展示されています。
その内容の充実ぶりには驚きました。
図録から少しご紹介させていただきます。

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浅井忠 「農村小屋」

荒井注ではありません。日本における西洋画の草分けで、彼の絵はみんな教科書で一度は目にしているはず。

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向井潤吉 「杏花村(北信森)」

みんな大好き、向井潤吉。失われつつある日本の原風景を描き続けた画家。もう存在しない風景なのに懐かしさを感じます。

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熊谷守一 「向日葵」

何と大胆な色使い!画面構成が完璧です。

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安井曾太郎 「果実図」

この絵が気に入って、しばらくの間見ていたのですが、図録の表紙がこの「果実図」でした。館長さんもお気に入りなのでしょうか。
プレートを見るまで安井曾太郎の絵だとは気づきませんでした。

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福本章 「朝の光(ベニス)」
日本画のように柔らかいタッチで、朝の空気が描き出されています。

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カミーユ・コロー 「サントゥーアンの渡し守」
これはコロー。まさにコロー。
コローの絵にそっくりと思ったら、そのまんまコローでした。
こんなに身近で拝めるとは思いもよりませんでした。

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ベルナール・ビュッフェ 「花束」
これもビュッフェ。どこから見てもビュッフェ。
大きな字で名前書いてあるし。

ご紹介したのはほんの数点ですが、まだまだ名画がたくさん展示されていました。
図録には掲載されているけれど展示されていない絵も多くあり、今後が楽しみです。
収蔵作品数は450点もあり、年に4回ほど作品を入れ替える予定だそうです。
何故そんなことを知っているのかというと、館長さんから伺ったからなのです。
絵を見ていると、館内でしゃべっているおじさんがいて、注意しようと思ったら館長さんでした。大変失礼しました。
館員の方に展示の指示をなさっていたのですね。
何故近代絵画をコレクションなさったのかお聞きすると、
「明るくていいでしょ。ルネサンスなんかは宗教画とかだから気分が沈む」とおっしゃっていました。
全く同感であります。
私も近代絵画が一番好きで、現代美術まで進むと訳が分からなくていけません。

名画は多くの人の目に触れてこそ、その価値を発揮すると私は思っています。
絵画を資産としてしか見ていなければ、自分が楽しんだ後は高値で売却するでしょう。
でも、館長さんは、私財を投じてまで私たちに数々の名画を見る機会を与えて下さったのです。
心から美術を愛していらっしゃるんでしょう。
久しぶりに「篤志家」という言葉を思い出しました。
背丈だけでなく、心も「ビッグな」お方なのでしょう。
「大村明は男でござる。」と言わせていただきます。

絵を紹介するときはいつも書いていますが、印刷や画面と実物は全く違います。
ぜひ本物をご覧になってください。
これだけ充実した美術館はそうそうお目にかかれないでしょう。
お近くの方はもちろん、遠くから足を延ばしても見に来る価値があると思いますよ。

公式サイトはこちらでござる。
http://shizuoka-kinbi.jp/

「女性を描く」展

文化の日であります本日、浜松市美術館で開催中の「女性を描く~クールベ、ルノワールからマティスまで~」に行ってまいりました。
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古今東西を問わず、審美眼に長けた画家は美しい題材を探し求めます。そして、いつの時代も女性は画家の格好のモデルとなっていたわけです。
今回の展覧会は近代の女性肖像画ばかりを集めたとても興味深いものです。

気に入った絵がいくつもありましたので、珍しく図録を買い求めました。
展示してある絵画のポストカードがほとんどなかったという理由もありますが。
数点紹介しますが、いずれも図録を写真で撮ったものなので、画質は良くありません。絵画の良さは本物でお楽しみください。

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クレマン・ランドルク 「マリー=クレール・カリエールの肖像」(制作年不詳)
肖像画はモデルの人格までも表現します。この方も聡明さと意志の強さが伝わってきます。

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ジャック=エミール・ブランシュ 「ミミ・フリードランデルの肖像」(1913)
ああ、きれいな人だなあ…。
できることならずっと見ていたい。
足が疲れたので次に移動しました。

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オーギュスト・ルノワール 「麦わら帽子の少女」(1885)
ルノワールの未完成作品です。
ルノワールのタッチには見えませんね。敢えて人物の右側に余白を大きくとっているのも謎。
でも妙に引き付けられてしまいます。それも謎です。

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マリー・ローランサン 「ギターを持つ若い女性」(1940)
ローランサンはいいなあ。ホッとするなあ。
寒色系でまとめた画面の中で頬にさす赤みがとてもきれいです。実物でご確認ください。

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モイーズ・キスリング 「赤い洋服のモンパルナスのキキ」(1933)
とても鮮やかな赤い服が画面の大半を占めています。
でも、見る者の視線は瞳に集中してしまうんです。
実際のモデルさんもおそらくそんな人だったんでしょうね。

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シャルル・オフボーエ 「海岸にて」(1907)
図録には2頁にわたって印刷されていたので、この絵だけはネットから借用しました。
とても気持ちのいい絵です。
静かな構図ですが、確かに風を感じます。

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アルバ・ミグル 「春の目覚め」(1903)
これもずっと眺めていたくなる絵でした。
女性の柔らかな体のラインが柔らかいタッチで描かれています。
顔はあえて影の中に。
眠っているのは絵の中の女性なのか、はたまた自分が夢の中でこの女性を見ているのか。
そんな錯覚に陥りそうになりました。

あらためて女性の美しさを認識する展覧会でした。
ご紹介したい絵画はまだまだたくさんあります。
お近くの方はぜひ美術館に足をお運びください。
僕ももう一度見に行こうかと思っています。
会期は12月25日(日)までだそうです。

おまけ

今日はとても良いお天気でした。
風は少し強かったものの、浜松城公園はとてもさわやかでした。
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素敵なコーヒーショップがありましたよ。
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移動式ですが、コーヒーは本格的でとても美味しいものでした。
美術展の後に公園でコーヒーを飲みつつのんびりしていると、心が軽くなるようでした。
また来ようと思います。

マリー・ローランサン展

オッス!おらテイラー・スウィフト!

久しぶりの更新ですが、馬鹿が治っておりません。

このブログは私の個人的な日記代わりなのです。
書きたいことはたくさんあるのに、書けません。
睡眠時間を削ってまで日記を書きたくありません。眠いです。
というわけで、最近の出来事を備忘的に書き並べます。

7月4日(日) 瀧川鯉昇師匠と入船亭扇遊師匠の落語を聴きに行きました。大笑いしました。
7月11日(日) 名古屋に小野リサ様のライブを聴きに行きました。最高でした。
7月17日(金) 乃木坂ちゃんの映画「悲しみの忘れ方」を見ました。オヤジの目にも涙です。
7月19日(日) 昨日ですが、弐号機(M696)を少しいじりました。快調です。

まあいろいろあるわけですが、今日は浜松市美術館で先月から開催されている「マリー・ローランサン展」の事を書こうと思います。


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もし、マリー・ローランサンと友だちになったら、何て呼べばいいんでしょうか。
「ローランサンさん」?
素直に「マリー」と呼べばいいわけですが、ここら辺はアグネス・チャンさんと通じるものがありますね。

ローランサンといえば、柔らかいタッチと淡い色彩で世界中の人々から愛されているわけですが、最初からあの画風を確立したわけではないんですね。
こうした展覧会では、作家の生涯を通した作品を縦覧できるのでとても勉強になります。

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『自画像』 1905年頃

最初期はとても古くさいタッチです。
陰気なおばさんだと思ったら、自画像でした。
しかも、マリーさんはこの頃、まだ二十歳そこそこ。
こりゃ、失礼しました。

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『パブロ・ピカソ』 1908年頃

マリーさんはピカソやブラックとも親交が深く、キュビズムから大きな影響を受けます。
ピカソの肖像画なんて、まさにキュビズム。エジプトの壁画みたいです。
キュビズムの影響を受けつつも、次第に自らのスタイルを生み出しつつある。
その辺が展覧会ではハッキリと見てとれるのです。

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『舞踏』 1919年

キュビズムの言語を用いながらも輪郭は薄れ、強い色は使われなくなります。

その後、完全にキュビズムを離れ、ローランサン独自の画風ができるわけです。
ポストカードを数枚買いましたのでご紹介します。

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『接吻』 1927年頃

私はこの絵が大好きです。
画面から深い愛情が伝わってきます。

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『らっぱをもって』 1929年頃

少女の表情がとても優しくて素敵です。
ちなみに私は「少女の表情」という言葉が言えません。

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『ばらの女』 1930年

人物は平面的で背景に溶け込んでいるように見えますが、目が印象的で、目が全てを表現しているように思えます。

マリーさんは晩年になって、なお自分の画風を進化させようと試みます。

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『シャルリー・デルマス夫人』 1938年頃

人物の表現がやや写実的になり、キュビズムが好んで使った赤や黄色などの強い色を再び画面に入れるようになりました。
一部のマリーさんの信奉者達はこの変化を快く受け入れなかったようですが、私は大好きです。
全盛期のマリーさんの絵が、夢の中で出会う女性だとしたら、晩年に描かれた女性は、夢から覚めた夢のようです。
でも、やっぱり夢の中なんです。
そんな優しさが世界中の人を今も引きつけているんでしょうね。

とても素敵な展覧会でした。


テーマ : art・芸術・美術
ジャンル : 学問・文化・芸術

プロフィール

猫助

Author:猫助
ウナギの里、浜松市在住。
オートバイと猫とビールをこよなく愛するオッサン。
肺年齢は89歳。

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気づいたら結構つぶやいてたりします。よかったらフォローお願いします。
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